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絵は、ポルシェ水冷エンジンM96/97系(986/987を
含む)エンジンの左側クランクケースです。

シリンダー番号でいうと、左から4,5,6番となります。
996/997ですと、右側後ろから4,5,6番です。

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内側から見た絵です。

 

 

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こちら側が996/997系ですと、後部になり、6番が
一番向こう側です。

 

 

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このピストンは、6番シリンダーの物です。
インテークバルブ側(エンジンの上側)のピストン
スカートが、異常にすリ減っています。
この状態を、ピストンのカジリ現象です。
通常、ピストンは、シリンダー内壁とピストンリング
1番、2番、オイルリングと3段のリングで接触してます。
ピストン本体は、エンジンオイルの保護により殆ど
シリンダーとは、接触してません。

しかし、絵のとうり、6番ピストンのスカートは、、。
では、原因は、、。

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シリンダー6番は、激しく削られてます。

 

 

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何度も見せますが、このクランクケースは、シリンダー
が一体のオープンデッキと言います。
絵のように、液冷の水路が上から丸見え、。
反対に、水路が見えないケースをクローズドデッキと、。

 

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絵は、水路の深さを計っています。
国内で有数なレースエンジンなどを開発、国内ビッグ
カーメーカーのエンジン開発なども手掛けている友人の
エンジニアに相談、クランクケースと、ピストンを見せました。
その結果、結論は、冷却不足と強度不足という結論、そして
シリンダー内壁のメッキ処理が性能低いと判断されました。

まず、冷却不足は、エンジンの内部の冷却にウォーターポンプ
といって、ファンベルトで駆動しながらポンプを回し、液を
圧送しながら、クランクケース内を冷却しますが、液の
流れが、特に6番シリンダーが悪いのです。

また、それに輪を掛けて、水路が浅い。
そして、特に3,8LのカレラS系などは、北海道で、発売
したディーラー車の殆どが、このカジリでエンジン破損という
恐ろしい結果が出てます。

次に、ティプトロの車輛が多く、ピストン齧りを発生してますが、
それは、日本国内、ポルシェオーナーさんは、エアコン作動し、
渋滞や、ゴーストップの多い、大都会周辺での使用頻度が高い。
その為、エンジン回転数は、2000RPMも回さないで、用を
足します。
ということは、ウォーターポンプの圧送力も低く、液の流れが
悪い。
そこへもってきて、6番シリンダー付近に滞留します。
水温は、最近のエンジンは、100度くらい上がります。

次は、シリンダーです。
オープンデッキは、アルミ鋳造成形には、もってこいの量産性
大です。

しかし、直径100mm以上のボア系に、肉厚薄いピストン
上死点付近で、爆発膨張した燃焼ガスは、容赦なくシリンダー
内壁がたわみます。
100度近い液温、燃焼ガスによりシリンダーは、変形します。
で、ピストンのスカートがシリンダーと接触、1本のスジと
なり、それが、雪ダルマ方式で、どんどん大きくなるのです。

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絵は、シリンダー内側からのもの。
シリンダーの外壁を油冷で冷却する為の溝が、そう、70mm
以上と、液冷側より深いです。
また、シリンダー内壁のメッキ処理も、単価の安い処理です。

考察
運転状況は、通常運転の事から、高回転高負荷の連続運転で
怒った現象ではない。

破損部分を見ると、ピストンスカートIN側の最大径周りが
もっとも損傷してる。
シリンダー側は、下死点付近のピストン最大径が当たる部分が
損傷大。
冷却系は、オープンデッキを採用してるが、冷却水路は、シリンダー
上部30%くらいしか冷却通路がない。
残り70%は、支持部とケース内オイル冷却となっており、オイル
温度の影響大。
損傷してるのは、上部のIN側なので、ヒートスポットより損傷
したとは考えにくい。
水平対向なので、IN側のオイル潤滑には、厳しい状況が考えられる。
上記状況から、冷却水温度差により、シリンダー変形が大きくなり、
潤滑の厳しいIN側のピストン最大径ぶぶんが最初に損傷したと
考えられる。

対策
1) シリンダーの変形を抑制する。
2) シリンダーに鋳鉄ライナーを挿入,剛性アップを行う。
3) ダミーヘッドでの真円度、円筒度の向上を図る。
4) オイルクーラーを強化する。
5) オイル潤滑を見直す。
6) オイルジェットの噴霧口を追加、変更する。
7) ピストンクリアランスの最適化。

など、実際には、鋳鉄ライナーによるシリンダー強化が、現実
には、実行してる現在です。
但し、費用がかさむ為、対費用効果は、現実には厳しいところで
あります。

以上、原因と対策を考察してみました。
私見でありますので、ご容赦ください。 

つづく。